松原泰道禅師(南無の会会長)

武田 仁さんの点と線

昔の人の言葉に“三日会わざれば、旧事の観をなすなかれ”とあります。僅かの間でもその人に会わなかったら、出会ったときに、昔ながらにその人を評価してはならない。必ずその人は、その間に進歩しているに違いないからというのです。
私が、武田仁さんにはじめてお目にかかったのは、昭和57年の春、佛教伝導協会主催の「佛教聖典を経営に活かす会」という、武田仁さんのお仕事とは、およそ縁の遠いと思われる集いの席であります。この出会いがご縁になって、武田仁さんの作品を、拝ませていただいております。
そのつど、武田仁さんのユニークな作品の成長に、私はしみじみと前掲の古人の箴言を思い出し、武田仁さんに、心から尊敬の念をささげるのです。

そして、先代中村吉衛門丈の芸談の次の一説を思い浮かべます。「自分の仕事に関する勉強は当然の務めで、勉強の名に価しない。自分の専門外の知識を吸収して、それを自分の仕事に役立てる努力が本当の勉強であろう。私も他の社会のことをいろいろ学んで得た知識で、私の芸を深めたい。雑学にならぬためには、その知識を私の芸の一点に燃焼することだ」と。武田仁さんが佛教伝導協会の講座に参加されるのもまた同じではないでしょうか。
仁さんが引く細い細い線に、仁さんの学びのすべてが奥深く統一されています。線は、点の無限の連続という。
無限無数の一点一点に、武田仁さんのお母さまの面影が宿されているから、仁さんの佛画は、温かい心で私たちを見つめてくれます。私の佛間にも書斎にも、武田仁さんの佛頭画を掲げて、つねに合掌しています。

 

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